radio-boy #9 GOAと完全対称型SEPP

  1993年頃から金田先生は完全対称型SEPPと称する極めて珍しい終段回路を発表し、議論を呼んだ。それは、図Aのようなものなのだけれど、この-側がエミッタ接地なのは当然として、+側もエミッタ接地だと言う。アースからの電位を軸に物事を考えるとよくわからなくなるが、終段の石にとって、あくまで入力はVbe(+Vre)で出力はIcなので、前段の出力が定電流出力と見倣せる限り、上下対称なのだそうだ。これが本当ならNチャネルしかない素子でPPが組める訳で正に福音と呼ぶべきだ。

  わたしは、この論争そのものに対してどうこう言う気はないけれど、この+側がエミッタ接地であるなら、この極性を反転して図Bのようにしてもいいはずである。勿論、完全対称の狙いの同一素子によるPPは台無しだけれど。さてこのうち、バイアス分はダイオードに任せて、2本の抵抗を1本の抵抗に置き換えると、図Cのようになる。これって何だか見覚えありませんか。抵抗の繋ぎ先をアースにすれば、金田先生御得意のGOA回路ですね。2段目のゲインを下げるために使う人もよくいる2段目負荷抵抗ですね。繋ぎ先を出力にしてあるだけです。ということは、普通のSEPPのアンプでも、この手の抵抗のある人はほんの少しの改造で、無くても抵抗一本の追加で終段エミッタ接地回路の実験が出来てしまうことになる。

図A,B,C

註 バイポーラトランジスタで書いてみたけれどMOSFETの方がよい。バイポーラでやるときにはダーリントン接続にして、入力インピーダンスを上げる。

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