tobyo # 008 長編第二弾

  今日は火曜日。週二回の貴重な入浴の一日目だ。
この時も食事時同様、ゆっくりとはしていられない。
戦争だ。
午前は要介護の人が看護婦にいれてもらう。
午後、私達の番だ。
七十人程いる病棟に、五つ程のシャワーと小さな浴槽が備えられた浴室。
時間が近くなると皆道具を持って、我先にと並ぶ。
様々な病気の人がいる病棟のお風呂に入るには最初、相当抵抗があった。
正直…気持ち悪かった。
だから絶対に直接座ることはしないし、浴槽に入るなどもってのほかだった。
しかし、私が入院していたのは夏。
何もしなくても汗が出る程の暑さの中で、週二回だけの入浴はきついものがあった。
だから、気持ち悪さを我慢して皆と一緒に入浴する。
子供のように無邪気にはしゃいでいる人を見ると嫌気がさした。
またもあの感情が湧き起こる。
「なぜ私がこんな所に…」
あるとき私は、病院での生活に耐えられなくなり、友人が見舞いに来た時、異常な程に取り乱してしまった。
「こんな所人間のいる場所じゃない!動物園だ!動物園だ!なんで私がこんな所にいなくちゃいけないんだ!なんでこんな人達と一緒の所にいなきゃいけないんだ!」 そう言って泣き叫んだことがあった。
その時私は、自分の中に「差別」という文字があることを気付かされた。
何の弁明もできない。
「こんな所」、「動物園」、「こんな人達」…
そう言った時点でもう、区別の域を超えている…
差別だ…
愕然とした。
自分がそんな人間だったなんて…
差別しているつもりなど今まで一度もなかった。
むしろ、そんな感情は自分の中にはないと思っていた。
だから学校やテレビなどで精神障害者の差別に関する時間があったとしても何言って
んだと思っていた。
その私が、自分が、「動物園」と言った…
取り乱していたとしても、それはもう私の口から出てしまったこと。
事実だ。

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2001/12/21