tobyo # 009 途中とばして最後。

  監獄を脱出する日がきた。嬉しくてしかたなかったが、他の患者に気付かれないように普通に振る舞う。
しかし、官室(看護婦のいる部屋)のボードに誰がいつ退院するか書いてあるため、自然に皆に伝わってしまう。
誰かが退院する日は決まって病棟の空気が重くなる。
皆沈んだ目をして口数が減ってくる。
私が退院する日もそうだった。
私にこう聞いてくる人もいた。
「私も退院できるよね?すぐ退院できるよね?」と…
正直、とうてい退院出来そうにない人ほどそう聞いてくる。
でも私はそこで笑顔でこう言う。
「できるよ!すぐに退院できるよ!」と。
すると安心したのか聞いてきた人は笑顔で去って行く…
胸が苦しくなる一瞬だった。

いったいこれだけたくさんいる患者の中でどれだけの人が、本当の意味で退院して社会復帰ができるのだろうか。
やはり、一生をここで終わらせる人もいるのだろうか…

無邪気に息子の自慢をひたすらする人もいる。だが、その自慢の息子がお見舞いに来るのを一度も見たことはない…

ぼろぼろに破れた羽根をつくろうこともなく、ただ飛び立てる日を待っている…


とりあえずここまで…

(T_T)/

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2002/03/01