tobyo # 010 退院して、しばらくして

  私は入院中、羽根のぼろぼろに破れたある天使に出会った。
彼女の病名は人格障害のうちの適応障害。
ひとりぼっちで心細かった私には本当に天使だった。そう最初のうちは…
人格障害の患者とはおうおうにして、他人を振り回す傾向がある。
彼女も例外ではなかった。
入院中は気が付かなかった。
しかし、私が退院してから事態は急変した。
彼女は親友から私を困らせる天敵へと変貌した。
週2回のお見舞いはかかさないこと。
差し入れのお菓子もかかさないこと。
病院内ではお金を持てないので、ジュースを飲みたいときは私がいつも払う。
クリスマス前。。私は彼女に呼び出された。
絶対に面会にきてくれと。
私は彼女の要望通り面会に行った。
すると彼女は工作道具を持ち出してきて、こう言う。手づくりのクリスマスカードが作りたいと。だから私に手伝ってくれと。
私は手伝うくらいならいいと快く承知した。
彼女は作り方がわからないから見本を見せてくれと言った。
だから私はこうすればいいのではないかと見本を一つ作った。すると彼女はこう言い始めた。
「みちうまーい!全部作ってーー!」
それが当り前のように言う彼女に私は何も言えず、「いいよ。」と言ってせっせと作り始めた。
しばらくすると彼女は予想だにしない言葉を口にした。
「みちー、私ねむくなっちゃったー。ねてきていーい?」
私はさすがにびっくりしたが、「いいよ。」と言って彼女の申し出を受け入れた。
それから私は一人でクリスマスカードをつくり終え、彼女が起きてくるのを待っていた。
しかし、いっこうに起きてくる気配のない彼女にとうとうしびれをきらした私は彼女の病室に行った。 すると彼女は気持ち良さそうに眠っていた。 私は、「カードできたから帰るね。」と言った。
彼女は、「あー、みちありがとー。見送らなくていい?じゃあね、ばいばーい。」
さすがの私も頭にきていた。
2時間近くかけてお見舞いに来ているというのにあの態度はなんだ!
私は彼女の召使いか!

  それ以来、私はなにかしら理由をつけてお見舞いには行っていない。
なぜなら、今彼女に会ったらなんとも言えない怒りを彼女にぶつけてしまいそうだから…
彼女を傷付けることはしたくなかった。
彼女は一度、病院内で友達をなくしている。

  人を振り回す彼女に嫌気がさしたその子は、手紙で彼女に別れをつげた。
その時、彼女は自傷をして、その子に傷を見せてこう言った。
「お前のせいだ!一生恨んでやるっ!
お前なんか死んでしまえ!」と…
結局、その子も手を切り最悪の事態におよんだ。
その話を彼女から聞いたとき、正直ぞっとした。
これで私までもが彼女に別れをつげたらどうなるのだろうと…
彼女は、すぐに「親友」という言葉を使う。
だが、あきらかに「親友」の定義を間違っていた。
自分のためになんでもしてくれるのが彼女の言う「親友」…
でもそんなのは親友でもなんでもない。
彼女はいつかそのことに気付くときがくるのだろうか。
今私は実家に帰っていることにしている。
彼女から来た手紙には、また親友が出来たと書いてあった…

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2002/4/2