autobiography # 031 札幌ドーム道をゆく

 実は弱性のプロ野球ファンである。年に一度球場に行って試合を見ている。札幌でプロ野球ということになると以前は円山公園内の円山球場であったのだが、2002年のワールドカップのため札幌ドームが建設されてからはこちらで開催されている。円山球場は円山の山腹にあり、夕暮れの美しさには定評があったのだが札幌ドームは何分ドームなのでディゲームでも遠足の楽しみは得られない。そのかわり、雨でもゲームが実行されるし、全席指定なのであらかじめ前売を買っておくのが得策である。

 さて、本年のスワローズの試合は7/19、7/20と二連戦であった。しかし、昨年、本年と準備不足のため悲しい思いをしたのでここに備忘のため、なさねばならぬことを書く。まずスワローズファンの応援は東京音頭を踊らねばならない。得点のある毎にこれを舞い、かつ勝利決定の際にも舞わねばならぬ。よって緑の傘を忘れてはならない。ただし初回は球場のグッズ販売所で買うのがよい。それというのも一般用のビニル傘では直径が大きすぎるためドームの狭いスペースではジャマになるからだ。隣のネエチャンと傘触り合うも多生の縁てなことになってしまう。これはマズい。パコパコメガホンはないと盛り上がりに欠けるのでこれも必須である。なおスワローズの選手およびマスコットのツバ九郎はスタンドにボールを投げ込むのが好きで一試合に10個以上のボールが舞い込むからグラブなどあれば心強い。

 ここまでのまとめ…必須グッズ。

  1. 緑の傘
  2. パコパコメガホン
  3. グラブ

  交通手段は地下鉄がよい。札幌はジャイアンツファンが多く、ついでコンサドーレファンが多いため日常生活ではそうそう会う機会のないスワローズファンであるが試合の日に地下鉄に乗れば世界はスワローズファンに満ち満ちているのである。この人々はこの一年を秘かに隠棲していたのだろうか。年齢風体は当然多岐にわたるわけだが、けっこう多くみるのが年期のはいったスワローズグッズを手提かばんに満載し、ひとりでやってくるお姐さまがたである。かつての池山ファンギャルズであろうかとも思われるがそれ以上の風体のかたも多々いらっしゃる。かつての若松ファンギャルズに違いない。

  東豊線福住駅を下りればドームまではすぐそこであるが、あわててはいけない。開場して、両軍の試合前練習が二時間、ゲームは三時間、都合五時間におよぶショウである。休日の一日をフルに楽しまねばならない。まずは福住駅となりイトーヨーカ堂地下食品売場にいく。正しい野球観戦は幕の内弁当と共にある。球場内にも弁当販売はあるが豪華絢爛かつアンリーズナブルなほどにリーズナブルなお値段となるとここの幕の内にかぎる。しかし、白熱する試合観戦をしつつ手掴みでワイルドにむしゃぶりつくという観点からは高菜おにぎりないしは巻き寿司というチョイスも捨て難い。食後にはデザートないしはおやつというのも大切である。「わたしを野球に連れていって」ではピーナッツとクラッカージャックを買わねばならぬらしい。この場合もポイントは鷲掴みであろう。かつて映画館には必ずやポップコーンと酢昆布が設置してあり、映画と酢昆布には切っても切れぬ縁があったのと対応している。しかし、酢昆布の鷲掴みは避けたいような気もする。

 飲み喰いとなると当然飲料が欲しいところであるが、球場内にはウーロン茶やコーラ、ビールの場内販売があり、「姐ちゃん、ビール」とやればいいのであるが、問題はコールドドリンクばかりである。ホットコーヒーならば階下の販売所にいけばあるが、幕の内、おむすびといった趣向からは熱いお茶が欲しいところである。ここは魔法瓶水筒に緑茶ないしはほうじ茶など入れていくのが正しい。フラリと立寄った球場でたまたま開催されているゲームをちょろっと見物して、寒風吹き荒ぶ帰り道を駅まで背中まるめて歩くなどというのも一興ではあるが、万全の準備でもってドラマティックな休日を盛り上げるというのをここでは本筋とする。

 ここまでのまとめ…交通手段。

  1. 地下鉄福住駅下車
  2. イトーヨーカ堂経由
  3. 徒歩にてドームまで

 ここまでのまとめ…要選択携帯食料。

  1. 幕の内
  2. おにぎり・巻寿司
  3. おやつ
  4. 水筒とお茶

  さて応援者たるもの勝利となれば、天にも昇り、敗戦のあとは地の底にも沈む定めである。7/20の敗北のあとには敵役である平井投手の復活に内心の声援を送りつつも、しかし背中を丸めて福住まで歩く。勝利に浮かれるドラゴンズファンは球場でもうひと盛り上がりし、祝勝会ののちに来るからいまは誰もが言葉少なに俯いてあるく。まさに10レース終了後のオケラ街道のごとき眺望である。しかし昨日7/19日はスワローズの勝利であったので同じ思いをドラゴンズファンがしていたわけである。わたしは見た。出口ホール付近で円陣を組みただ黙祷を捧げるドラゴンズ応援団を。万感の思いをただ目を閉じてかみしめる白髪白眉のドラゴンズ法被の老人たちを。

  いまはただ、「明日になれば」と呟きつつ背中を丸めてこの場を去る。

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 2003/7/21