IBMのThinkPad560EはいわゆるA4ノートパソコンである。12インチのTFT液晶パネルとフルサイズのキーボードを備え、フロッピィ,CDなどドライブは全て外付けにして本体を当時としては可能なかぎり薄型としてある。しかし、如何せん1997年の製品ということでメモリ32Mbyte,cpu MMXPentium166MHz HDD 3Gbyte といまとなっては少々控え目なスペックである。DVDを見るには少しつらいものがある。
しかし、当方ではこれでのDVD『メトロポリス』の再生に成功したのでここに報告する。まずOSであるがこれはPlamoLinux である。ここではPlamo2.6をインストール、Xwindowは3.3.6である。DVDドライブであるがこれは560にはつかないので、デスクトップマシンについたものを流用する。
まずはDVDドライブを提供するデスクトップマシンの設定である。マシンはi815chipsetを搭載したローコスト自作機でCPUはPentium3 800MHz Ram 512Mbyte HD 30Gbyte というもの。ヨメハンの会社で使用されていたものだが、機種をアップデイトするということで貰ってきた。OSはウインドウズ2000が使われていたが、こいつはわたしには使いづらいものなので、新たにPlamo Linux 3.1をインストールする。わたしの知る限り現在もっとも使い易いOSのひとつであろう。
マシンは貰ったがうちにあるモニター(15インチCRT)は起動してから三分以上たつと画像がボケて判読不能となる。よってインストールは可能なかぎりモニターをオフにして行う。こまかい設定はさておき、おすすめ設定を利用する。ネットワークさえ設定してしまえばあとはネットワークごしにSSHを使ってノートマシンからリモインして設定すればよい。インストールが終了すればもうキーボードもマウスもモニターも必要ないのでとりはずしてよい。ただし、Ethernetケーブルとサウンドアウトプットだけはそれぞれネットワークとアンプに接続する。アクティブスピーカでもよいがDVDであるから、ちょっとはましなオーディオシステムに継ぎたいのが人情である。当家では通常のステレオシステムに接続している。
さて設定だが、/etc/ssh/sshd_configをエディタで開き、
# X11Fowarding no
を
X11Fowarding yes
と書きかえる。これでデスクトップ側のXアプリがノート側でも使用できるようになる。いっぽうノートマシンのほうも/usr/etc/ssh_configを開き、
# ForwardAgent no # ForwardX11 no
のエントリを
ForwardAgent yes ForwardX11 yes
と修正しておく。このssh_config およびsshd_configはそれぞれsshクライアントとsshサーバの設定ファイルだが、Plamo2.2.6以前では/usr/etcにPlamo3.0以降では/etcにあるので見あたらなければ、locate コマンドを使って探すとよい。書きこんだら、sshdに変更を反映させるために再起動する。
killall -HUP sshd
さて、もう一つはオーディオの設定である。 いまのところ音声はデスクトップのほうで再生されるので、デスクトップ側のサウンドカードを設定してやらねばならない。このカードi815なのでオンボードでAC97サウンドがある。これを使うには/etc/modules.confを開き、
alias char-major-14 i810_audio post-install i810_audio /usr/bin/aumix -q -v85 -w88
というエントリをつくってやるとよい。二行目はべつにaumixでなくても適当なmixerでよい。ただ、plamoの場合はcontribにaumixがあるのでこれをinstallpkgでインストールするとラクチンである。このミキサーは端末でもコマンドラインでも簡単に使用できる使い易いミキサーである。
DVD再生ソフトだが、これもPlamo3.1のcontribにxineがあるのでこれを使う。インストールは簡単でcontrib/DVDに移動して、installpkg *.tgz以上おわりである。ライブラリだのUIだの各種あるので全部インストールしてしまう。
ただし二点だけ追加の設定を要した。ひとつは/dev/dvdの作成である。xineはこのデバイスファイルを介してDVDを読む。うちのDVD-ROMは/dev/hdcにつながっているので
# cd /dev # ln -s hdc dvd # chmod a+r hdc
ついでにパーミッションも変更しておく。
もうひとつはオーディオドライバであるがこれは初回の起動時に -A oss というオプションをつければ以降はそれが記録される。カーネルモジュールのオーディオドライバはこれでよいようである。二回目以降はこのオプションは不要である。
準備がすんだら実行である。まず、デスクトップマシンを起動し、dvdドライブにdvdを入れる。マウントはする必要はない。
ノートマシンを起動し、Xをスタートする。起動時からGUIでログインするひとはそのままでよい。rxvt またはktermを開き、ssh をつかってデスクトップマシンにリモインする。DVDの開始はつぎのコマンドをいれる。
xine -A oss dvdnav://
ただし、どうもいまのところ映像とコントローラ、ほかのウィンドウなどを描画するのは苦しいらしく、結構ハングしやすい。全画面表示としコントローラも隠したほうが動作が軽快、かつハングしないようである。
ちょっとインチキという気もしないではないがとりあえず、ThinkPad560でDVDを見ることができている。だったら、デスクトップマシンで見ればよいではないか、という声は却下である。前述のごとく、うちの15インチCRTは3分間しか使えないウルトラマンCRTなのである。だからといってDVDためだけにディスプレイを新調するというのもアレでしょうが。
なお描画速度は若干控えめである。よって観賞の感想としては紙芝居のようなメトロポリスであり、ますます風情豊かであったことを追記しておく。
2003/6/16