ayya # 051 ワールドカップと日の丸

  おさわがせのワールドカップサッカーも終了である。6月29日に韓国大邱で韓国-トルコの3位決定戦があり、3-2でトルコが勝利した。試合終了の鐘とともに韓国選手はその場にヘタりこんでしまったが、トルコ選手たちはこれに手をさしのべてひきおこし、抱擁し、赤と白のユニフォームが交互にならんで場内を一周、観客に礼をしてまわる。観客はこれに惜しみない拍手をおくる、とまあ一種感動的な光景となった。わたしはこの手の勝者から敗者への賞賛というやつが苦手で、敗者にはソっとしておいてやってほしいほうだがまあそれはよい。客席では韓国の国旗多数とその半数以下であろうかトルコの国旗がふられ両軍の試合ぶりが賞賛された。

  目をひく巨大なトルコ国旗もあり、大勢の観衆がそれを広げていた。これはテレビ解説によれば一部はトルコからきた応援の観客であり、さらに多くは韓国人のトルコ応援者であろうとのこと。愛国心あついひとの多い韓国ではあるけれど、外国チームの応援をする人もそれなりにいてもおかしくはないのだろう。両手に両方の国旗をもってふりまわす人々も相当数おり、かくて赤いトルコの国旗と白い韓国の国旗がなかよく乱舞するのであった。美しいともすさまじいともいえる光景であった。

  さてわたしが考えたのはこの試合、ひょっとが3つくらいすると日本チームがトルコチームにかわって出ていたわけである。そうするとここでトルコ赤い旗のかわりに日の丸が振られたのだろうか、ということである。韓国大邱の競技場で愛国的韓国観衆の目の前で日の丸をふるんだろうか。とりあえずわたしにはそんな度胸はない。無惨な歴史をもつ日の丸をまさにその被害者のまえでふるというのは。ところが、いまどきの若い衆のなかには、そんな歴史は知らないとか、関係ないとかいうことでおかまいなしに振る人もいるであろうことは想像に難くない。そうなれば侵略の歴史をいなおったり、隠蔽しようとしたり、それどころか韓国は被害者意識が強過ぎると逆に反感をいだいたりする日本人に対し反感をいだく人、および往年の日本の侵略を体験したかたは感情を逆撫でされるであろう。それはそうである、ドイツ人がチェコやポーランドでハーケンクロイツを振るようなものであるから。

  かくして、日韓親善の共同開催はあわれ両国の敵愾心をあおる結末に、ということもあったわけである。

  しかし、これからも各種国際大会はあり、そのたび国の代表が国外でたたかうわけで、例えば北京オリンピックでは日本代表が活躍したりすると「恨みをもちだしはしないが忘れたわけではない」中国人の目の前で日本から乗り込んだ人々が無神経に日の丸を振りまわしてくるのかと思うといまからやりきれない気持がする。おまけにうっかりメダルでもとろうものなら君が代まで鳴り響くのである。 たかがこの土地に暮らす人が他の土地でくらす人といっしょに飛んだり走ったりして遊ぶこと、その遊びを見物することにいちいち国家が顔を出してその血塗られた歴史をひきずるのかと思うと暗澹たる気分がする。

[前へ] [次へ]
[Home] [目次]

2002/6/30