ayya # 057 おじいさんの古時計の怪

  先月くらいから大きな古時計というやつがNHKみんなのうたでやっていて、えらくヒットしているらしい。平井堅とかいう歌い手がやたらネバっこく歌っており、好きなひとにはすごくよいらしい。この歌手がこの歌の故郷を訪問するというNHKの特別番組が今年になってから何度も放映されていて、満を持してCDも発売され、なんだか仕掛っぽい雰囲気である。

  わたしはこの歌そのものはキライではなく、何度か人前で歌ってしまったこともある。アレンジとしては高田渡がねこのねごとでやってるやつのほうがカッコいいような気がする。ここらへんは好みというやつだ。

  ただ、歌詞のほうは異本があり、エンディング部分が現在「みんなのうた」では

♪いまは、もう、動かない、その時計。

となっているが、「ねこのねごと」では

♪いまは、もう、動かない、おじいさんの時計。

となっている。が、わたくしがかつて歌ったのは

♪いまは、もう、動かない、おじいさん時計。

であり、わが盟友とだ☆おっとせいによれば

♪いまは、もう、動かない、おじいさん。

である。この時計、どうやらおじいさんと連動しているらしく、その進行とおじいさんの生命活動が一体である。しかし、星の運行と人の生命活動の連動というのは運命の基本であるからして、おじいさんの宿星はこの時計なのであろう。時計は百年以上まえのシロモノとて動力源は重石かまたは、ゼンマイかと思われるが、故障や巻き忘れで何度か止まることもあったろう。そのたびにおじいさんも止まったに違いない。

  この歌詞の応用の広さは特筆すべきものがあり、

♪大きなのっぽのふる×××
おじいさんの×××
百年いつも動いていた御自慢の×××さ
おじいさんの生まれた朝にやってきた×××さ
いまは、もう、動かないおじいさんの×××

  このように伏せ字としてみるとモロモロの可能性が生じる。あらまあ、おじいさんったらスゴイのね、スゴイのね。「正義」とか、「社会主義」とか、「ナショナリズム」とか、「生産力信仰」とか、いろいろ遊べるわけなのであるが、伏せ字のままにしておくのが最も淫靡なかんじもする。ライブ演奏の場合はリムショットかクローズドハイハット3発であろうか。

  とはいえ現代、時計にせよ、車にせよ、パソコン、掃除器、箪笥に包丁、あるいは銀行や保険会社やもしくは社会体制にしても、人の一生より長もちする装置がどのくらいあるのかちょっと興味があるところである。生涯雇用というのは企業が倒産しないことが前提とならざるを得ないのだけれど、平成不況以来、銀行も、証券会社も企業は倒産するものであるというあたりまえのことが再認識されるようになった。一般に企業の平均寿命は人の平均寿命よりはずっと短いものである。国家の寿命はそれよりは長いかもしれないが、例えば、大日本帝国の場合は明治4年の廃藩置県から二次大戦終了までとすれば75年、ドイツ帝国では1871〜1920年とすれば50年である。

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2002/9/25