autobiography #1 生涯の決断

  高校2年のときだった。来年は文系と理系でクラス分けするのでどっちか決めいとのことである。

  私はラジオ少年であった。アマチュア無線部員でもある。交信は苦手だが半田鏝を握りしめていると幸せだ。それに小学生の頃の夢はイデ隊員である。ウルトラマンに出てきて、役に立たない発明をしては愉快なエピソードを作り、怪獣退治のほうはウルトラマンにおまかせするあのイデ隊員である。毒蝮三太夫扮するアラシ隊員とデコボコ・コンビを結成していたあのイデ隊員である。宇宙戦艦ヤマトの真田さんも捨て難いが、彼は有能過ぎるので私のキャラクタには向かないだろう。それに彼って本当はサイボーグだし。ちょっとだけ二枚目だし。ここは立派な電気屋さんへの道を歩みたい。


 経歴
 某大学大学院(工)を卒業
 天下のソニーか松下はたまたシャープに研究員として就職。
 35歳で退社、恵比寿町の共立電子産業または福岡の
 カホ無線に電子キット開発要員として就職。
 郷里に戻り、佐谷電子部品商会(有)を設立、
 「わかやまロボットコンテスト」を主催。

  どうだ、なんと完璧な生涯設計。

  しかしだ、私がこのような世のため人のため役立つ人材になれよう筈がない。中学校では、生徒会長なんぞになりながら、公約の「制服・持ち物の自由化」、「職員会議による一方的校則決定に対する拒否権の確立」などケもなく、狭苦しい生徒会室で担当教員とああだこうだ喧嘩するのが関の山であった。で高校生になって、生徒会ではダメだと思って高校生集会の主催に関わってみたが、人に話を聞いて貰えたタメシがない。ようするに運動の組織化という基本的な活動を差し置いて既存の枠組にのっかって何かできると思うからイケナイのだが。まあそれやこれやで自分で勝手に傷を背負ってしまったワケだ。

哲学をやって小六ツかしい理屈を並べつつも実質的な役にはちっとも立たない奴になりたい。無用の人の道をすすもう。(真面目な哲学者のみなさま御免なさい。)

  だから文系。

後悔はしてないし、間違ったとも思ってないが安易な決断ではあった。10代というのはどうにもひねくれてしまってイカン。その点、おぢさんとなったいまでは万事素直かつ感激性である。これこそ人生経験のありがたさであろう。

 

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