autobiography #2 普通が一番

  バンドなんぞを組んでた頃である。私はギターしか弾けないのでギターがパートである。ときどきなりゆきでエレキベースをやったこともあるが。それはさておき、ギターの調弦は低いほうからミラレソシミである。これをレラレファ#ラレとやるとオープンDチューニングというやつで分厚い音がでる。同様にオープンGとかオープンEというのもあって、これにボトルネックを組み合わせるとジャウゥーン、ザラザラ、カタカタとちょっと物凄い音がする。カントリーブルーズなどをコイツでへれへれっとやるとそれはそれは濃いいサウンドになる。

  キーボードのM君が「ええなあ」という目でみている。いや負けずにピアノもオープンチューニングすれば、ヤマシタ奏法でエルボーアタックを極めても、禁じ手のアックスボンバーをかましても、それどころかキーボード上でダンスしてもバッチリ、コードストロークできるワケなんだが。しかしながらメロディーを演奏するのがスゴく難しいという問題が残る。だいいち、ピアノのチューニングというやつはギターに比べて少し面倒なので無理らしい。

  ところが電子技術の凄まじさという奴でエレピというやつはチューニングが出来る。これはオープンDとかオープンGとか特定のコードにするのではなくて、そっくりそのまま何音か上下にズラして、たとえばG#といって、#が7つくらい付いてて、「鍵盤が黒いっす、弾きにくいっす。」てな場合にCといって#が0個のキーで演奏して音だけG#にするんだそうである。

  そんなワケでM君は電子技術のオカゲで「鍵盤が白いっす、ラクチンっす。」状態だったのだが、次の曲もそのチューニングのまま弾いてしまい、ギターはDのキーで、エレピはA#とポリリズムならぬポリコードで演奏してしまいましたとさ。めでたしめでたし。

  さてオープンDなのだが、これがマイナーコードを押えるのが結構大変な上、メロディーをやると物凄く難しい。蝶々蝶々がたちまち難曲と化してしまったりするのである。ひとしれず「ボトルネック蝶々ブルーズ」の練習に勤しむ青春の1ページであった。

  ともあれ、一曲オープン奏法でジャウゥーン、ザラザラ、カタカタをやると次の曲をどうするのか、この後、山本リンダとかフィンガー5とか普通の曲をやるにはチューニングを戻さねばならず、その間どうやって間を保たせるのかという深刻な問題に直面するのであった。

  教訓

  それぞれの普通が普通であるのには根拠ないしはお家の事情

  反歌

  気をつけよう一発キメた次の曲

  カーブのあとのストレート。(字足らず)

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