土用の丑の日くるたびに、うなぎコーナーできるたび、わたしの頭に去来する 山椒太夫の悲しげなまなざし。
暖簾くぐって、小粒でもピリリと辛いソレに手を伸ばす、わたしの頭に去来する 山椒太夫の悲しげなまなざし。
やつはじっとしている。微動だにしない。魚という名を 持ちつつも、怪獣ちっくなその風貌。
昔話と井伏鱒二との間に何のかかわりもないと 気づいたいまでさえ、わたしの頭に去来する 山椒太夫の悲しげなまなざし。
2001/07/19