autobiography # 012 バクチ好き

  私賭博は御法度である。違法である。賭博がではなくて、「公営でないバクチ」がである。つまりバクチは国家ないし地方公共団体の独占ということである。民間の賭博がなぜイカンのかというと射幸心をあおるのでイカンのだそうである。では射幸心というのは何かというと単に賞金が大きいことではない。それならサッカー籤や宝くじはイカン筈である。「ユメを買う」ということは射幸心とはいわないらしい。そこで民間賭博と公営賭博の違いを控除率、つまり主催者(オヤ)の取り分という点で見てみると以下のごとくである。

ゲーム 控除率
宝くじ(日本) 52〜56%
公営競走( 競輪・競馬・競艇・オート ) 25%
パチンコ 10〜15%
軍鶏賭博 10%
スポーツ(トトカルチョ、パーレイ) 5〜8%
ルーレット(アメリカン) 5.26%
丁半、アトサキなど 5%
手本引(ヤマポン、ソウダイ張り) 3.33%
スポーツ(ラインベット) 約2%
クラップス(パスライン) 1.414%
ルーレット(欧の一部) 1.351%
バカラ(バンク) 1.36%
クラップス(パスライン+ダブルオッズ) 0.572%
クラップス(パスライン+10倍オッズ) 0.184%
仲間うちの麻雀 0%
ブラックジャック(カウンティングあり) (子の有利)

[谷岡一郎「ギャンブルフィーバー」 中央公論社 より]

  こうしてみると公営賭博と民間賭博の差である「射幸心をあおる」とはよう するにオヤの取り分の小さいことつまり「安上がりである」ということであろう。 ボッタクリであればプレイヤーに勝ち目がない。即ち、射幸心をあおらない。 よって適法。 良心的であればプレイヤーに勝算がある。即ち射幸心をあおる、 だから違法。 というわけである。

  ところで公営ギャンブルよりは勝算の大きいパチンコは適法とはいいがたいが 違法でもない。つまりパチンコ屋が出すのはあくまで景品であり金品でなく、 どういうわけかタマタマその景品を買取る買取業者が近所にいるだけである。 よって、パチンコ屋は賭博を開帳してはいないことになっている。

  ようやく本題である。わたくし幼少のころよりトランプ、花札、マージャンと各種遊戯を愛好していたが仲間打ちの麻雀とパチンコをことの他愛好していた。過去形なのはともに長らくやっていないからである。

  というのも公営ギャンブルはテラ銭が25%もあり、この不利をハネ返して通算で勝つのことはほとんど不可能に思えるのである。バクチに子方で参加するのはどのみち不利である。子方が親に勝つことはできない。そんなことをすればバクチそのものが続かない。局面としては親と勝負しているようにみえても勝つ相手はあくまで他の子方である。バクチに勝つということは、テラ銭以上に負ける子方からその一部を頂戴して親にはテラ銭を上納し、そのおこぼれを頂くということである。テラ銭が25%もあれば、33%の利益を上げてようやくプラスマイナスゼロである。これは厳しい。いちばんいいのは仲間打ちの麻雀だがこの場合は雀荘の場代を忘れてはならない。平均的な打ち手は結局、場代の分だけ持ち出しとなる。

  バクチ、もといゲームの楽しみかたはプレイヤーの数だけある。なかでもメジャーな楽しみかたのひとつに自前の「必勝理論」というのがある。やれ「ツモの流れを読む」だの、「レース展開」の予想だの、「リーチがかかるとハンドルから手を離す」だの「カギ穴を押さえる」だの誰しも一家言あるものである。「ツモの流れ」なんかを読むくらいなら、そういうことをいってるヤツの「顔色」を読んだほうがよっぽど効果的と思われるがそこはソレ人それぞれである。

  わたくしの遊びかたは確率・期待値計算データ収集遊びである。1992年ころよくあった連チャンフィーバー系のパチンコは大当たり確率1/240,20%の確率で連チャンというものであった。従って一回の大当たりを引いた場合の大当たり回数の期待値は
1+0.2+0.2^2+0.2^3+0.2^4+…0.2^∞
である。あらなつかしや高校で習った無限等比級数ではないか。学校で習った知識がそのままガンガン生かせてしまう希有のチャンスである。もちろん公式
a(1-r^n)/(1-r) を使えばよい。ただしaは初項でこの場合1、rは公比でこの場合は0.2 nは項数でこの場合∞である。よって期待値は1.25である。1回の大当たりでの平均額が6000円ならば、6000*1.25=7500 だから7500円でルーレットを240回回せれば差引0円。ようするに1000円で32回回せればよろしい。

  これで負けないわけで幸運にして35回回る台に座れば6860円ごとに7500円貰えるわけで差引640円が勝分である。一時間に回転させられる数は300回といったところだから640*300/240=800円が「時給」というわけである。ただしこんなに回る台はひとシマに1台か2台あればいいほうだからそれは普段から確認しておかなければならない。打つべき台が空いてなければ適当な台で打ってはダメである。ほとんど全ての台は平均すれば負ける台である。またこれは平均してのものだから局面では大勝ち、大負け、ちょい負け、ちょい勝ちいろいろありである。おおむね、ゲームのつくりからいっておしなべて負け模様で連チャンがつづいたときにだけ勝ちになる筈である。

  あとはその台が本当に1000円あたり35回回る台かどうかを常に確認しなければならない。たまたま最初の1000円で50回回ったからといって次の1000円で5回しか回らなければ意味がない。よって通算の回転数と使ったタマの数を把握していなければならない。とくに出玉で打っているときには注意を要する。漠然としていてはわからなくなってしまう。いったん皿を空にして左手でもって正確に125発(500円分)なり250発(1000円分)なりを皿にいれ消費タマ数を把握する。こうなると結構忙しい。逆に大当たり中はムダ玉と玉ヅマリにさえ注意すればいいのでラクである。

  ところがなかなかこうカンタンにはいかない事情がある。(以下次号)

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 2002/2/6