金田式アンプは、全国に相当数のFANがおり、定評あるアンプである。だが、使用部品に厳しい指定があり、同一回路図で表されようとも、記事と同じ部品と作りようでなければ、エセ金田式であるといわれている。互換部品に置き換える事は元より、線材の引き回しに至るまでそのまま作るべし、というのである。これは、アナログ回路では良く解る話でもある。配線の引き回し、で特性はまるきりかわる。LF356Hなど@450もして、@130のLF356Nと全く同じチップなのである。唯、ケースが金属か樹脂かと云う問題だが、これで特性が大きく変わったりするのだから、恐るべしアナログ回路。
おまけにこの金田先生、常識破りが大好き。100Ωのカートリッジを820kΩで受けたりする。配線の引き回しがシビアな訳である。
ところが、この指定部品がちょっと凄い。3800円もする舶来FET、FD1840とか38000円もするSEコンデンサとかをビシビシ使うのである。ま、それでも300B終段の真空管アンプなどに比べれば、たかがしれているし、終段は2N3055/MJ2955だったりする。要するにお値段の高低には拘泥しない方なのであろう。ところが、この金田先生、1990年あたりから、入門用ということをいいはじめ、コストダウン版を発表しはじめなさった。
厄介なPPregulatorも省略可だと云う。私のポッケのお金でもTryできそうだ。ここはひとつ、やってみよう。必要な部品は少々特殊でも、恵比寿町のテクニカルサンヨーでそろう。(で、作ってみたのが下図のものである。)
不思議なくらい静かさを感じるアンプである。単に無音とかいうことではなくて、静けさというものが、感覚されるのである。高域がきれいとか、そういう話とは違って、端麗な静的空間が現れる。と云った感じである。アポロン的なんてセリフまで出て来てしまう。ま、主観といってしまえばそれまでだけど。
そうこうするうちに、先生、ALLFETアンプなど発表し始めた。2SK30A,2SJ72,2SK134,2SJ49なんか使っている。(知らない人は御免なさい。結構定番の、あまり高価じゃない石です。でも、金田式に搭載されるとたちまち相場が跳ね上がってしまうんです。電子立国ニッポン意外とパーツ市場は小さいか?)
私の記憶が確かなら、1980年代初頭のMJ誌上で、これらの石の事を貧弱な音だとか、オーディオには適さないとか云ってたような。ま、私としては、使い回しの効く入手の楽な安価な石と云うのは凄く助かるのだが。こうなると作ってみたくなるのが人情。前作は欲しいと云う友人に譲り、今度は、手持ち部品と自分なりの改造の楽なレイアウトで、電源も鉛バッテリーと充電機の併用でと。あわれ、かつての高嶺の花の金田式も一ラヂオ少年のおもちゃと化してしまった。でもこれ、1号機の静寂はないけれど、むしろ、生き生きした音がするような気がする。こうなると、やはりあれですか。この子をディオニュソス君と命名しよう。