radio-boy #5  スピーカの小市民

  オーディオファンの皆様、御自慢のシステムよりも、安っぽいテレビやラジオの音が妙に生々しく聞こえた事は無いでしょうか。そのことに気づきつつも認める訳に行かず、『ナローレンジなチープな音さ』と自分を偽った経験はないでしょうか。

  私はあります。これが、音質追求型のラジカセやTVなら、まして低音増強物なら『フン』といったところなのですが、16インチとかのテレビに申し訳程度についている5cmくらいのやつには、スピーカーの存在をわすれて、テレビやラジオの中に入っている小人さんに返事しちゃった事があります。それに比べると大抵のステレオや音質追求型のラジカセは「遠い」感じがして、ついついボリュームをあげたくなります。で、ボリュームを上げたとて、「迫力」ないし「やかましさ」はでるけれど、一向近付いて来ない。

  デスマス調に疲れたので元に戻す。

  多分複合的な要因があるのだろうが、経験としては10〜16cmのスピーカに実験的に裸でアンプをつないで鳴らしてみると、凄くナローレンジながら耳を近付けてやると良い音がする。これを箱に入れるとどうもいけない。小さな密閉箱は最悪。裏板をはずしてやるとかなり緩和されるような。背圧と言う奴か。確かに、如何に密閉箱とて、箱の中の音が、コーン紙そのものを通して出て来るのはどうにもならない。考えてみれば、どんな厚い重い箱を使おうと、ここは薄紙1枚である。だったら回り込みのほうは、目をつぶる事にして、スピーカを背圧から解放する事を考えた方が得策ではなかろうか。この方向でいくと、当然プレーンバッフルという線が浮かんで来る。早速実行、近くの廃材置場から、コンパネの切りカス20cmX90cmを貰って来た。両端に穴を開けてスピーカを取付け、中央部に半紙を貼る。これを鴨居のあたりに吊して一丁上がり。中央の半紙には、当然座右の銘が記される。タイミング、C調、無責任。

  しかし、以前からのメインシステムは、Fostex BK10にCoral 4A70を納めたバックロードホーンである。これは既に天板を載せて、コンピュータデスクの一部となっている。テレビもビデオもコンピュータも全部これで鳴る。さらに、私の持つ一番カッコ良いスピーカでもある。というわけで、暮らしの都合が優先されてしまう、ああ小市民。

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