「パワトラは音が悪い」とは、別府先生の至言である。この人の場合、決してFETは使わないのだが、FETは時として凄く便利である。そこで、人の話を途中までしか聞かないタワケ者として、中電力MOSFETで終段を組もうとおもうのである。理由は、たかだか8Wしか出せない終段のために、入力容量900pF最大損失100Wなんて化け物を使うのが嫌になったから。30W程度の中電力FETとしては2SK214/J77あたりがお馴染みであるが、これは160V/0.5Aとハイインピーダンスな使い方をするべきFETなので、今回は向かない。規格表に載っていても実際の入手が困難だったり、高価だったりではしかたがないので、テクニカルサンヨーの店頭で物色する事にした。ありました。2SK346/J102。60V/5A,30W。この石がどんな音をさせるのか、やってみなくちゃ解らない。とりあえず、組んでみたのが、下図の回路。上下対称回路にしたのは、±の電力消費量が近くなるようにと言うのが主目的。まあ、実際消費電流のほとんどは終段だからあんまり意味は無い。ただ、差動回路は避けたかったのと、当時流行りの電流帰還を採り入れたかったので、他の形式は思い付かなかった。自分の作った物は可愛いから、アバタもエクボモードかも知れぬが、結構気に入っている。