ハルマゲドンを生き残り、しかし、オサル同然自然に帰った人類が再び文明を再建できるか?というのはよくある問いである。とりあえず青銅器文明について考えてみる。
まず銅は地殻中に0.01%しか存在しないが、古代には自然銅として銅の塊が出てくることがあった。勿論こんなものはとっくに使い果たし、酸化銅を炉などで還元してきたわけだが、16世紀ごろからはこれも使い尽し、今では硫化銅の鉱石を精錬している。これは鉱石のうち銅成分の多い部分を選び、大量の酸素を送りこんで加熱し硫黄を酸素と反応させて二酸化硫黄にして取り除き、その後、硫酸銅溶液に溶かしてさらに電気分解する。この工程は一度文明を失なった人類には困難かもしれない。そもそも電気分解のシステムと電力をいったい何で作るのだろう。
スズはスズ石が(SnO2)なので炭素などで還元すればよいらしい。そのあとこれまた電気分解で純度を上げるのだが、まあ青銅器づくりには必要なかろう。鉛は方鉛鉱(PbS)を酸素を送りながら加熱し二酸化鉛にしてから無酸素状態でこれも電気分解する。電気なしではおはなしにならない分野が多い。とはいえ青銅器作りではモロくなるけど妥協して酸化鉛で手を打つか。
さて青銅器文明のおつぎは鉄器文明へと進みたいところである。元素としての鉄は地球上に最も多い部類であるから精製しだいである。ところが 古代にはあちこちに隕鉄として鉄の塊がゴロゴロしていたらしいのだ。もちろんこんな便利なものは早々に使い果し、赤鉄鉱(Fe2O3)や磁鉄鉱(Fe3O4)などの酸化鉄をコークスや石炭などの炭素と混ぜて加熱し、酸素を二酸化炭素にすることで還元する。ところがどっこい精製の楽な鉄の含有量の多い鉄鉱石はあらかたとり尽くし、各種不純物の除去が難しくなりつつある。
現代文明を主に担うのは電力であるが、これは電線として大量の銅を必要とする。がそのためには豊富な電力が必要である。他の資源についても使い易い資源はとっくに使い果たされており、現代利用可能な資源はそれを利用可能にするために文明が発達していることが前提という状況である。よって、いまの文明を失ってしまえば二度と再建できない可能性が高いといわざるを得ないだろう。
さて、石油資源の枯渇について危機が叫ばれてはや27年であるが、その他の鉱物資源がどうなっているかというと主要な金属については次のとおりである。
資源 | 現在の産出量での資源枯渇までの時間 |
---|---|
鉄 | 188年 |
銅 | 63.2年 |
鉛 | 49.2年 |
亜鉛 | 49.5年 |
スズ | 55.5年 |
ブルーバックス『金属なんでも小事典』より。
ただし、これは1995年のもの。とりあえず5+αを引いてみる必要がある。ただし、これらの資源については物質として消滅したワケでなく、廃棄物としてエントロピーの高い状態になってしまい、それゆえ利用不可能になっているだけである。従って、再利用の可能なかたちに分別回収ができれば、拡大再生産は無理でも寿命は伸ばせるハズなのであるが。現在のところ経済システムがそれを許さないでいる。ようするに廃棄物の回収よりも資源の消費のほうが経済的にはコストが低くなっているのである。
2001/07/13