ayya # 049 日比野の手紙

  ちょっとした知り合い、といって10年ばかりあってないが、に日比野という人がいて、パレスチナ人へのイスラエル軍の蛮行を少しでも柔らげたいということでパレスチナへいったところわずか1日でイスラエル軍に逮捕されてしまった。なんでも病人や怪我人のつきそいをした罪ということらしい。日比野が外務大臣にあてた手紙の内容が紆余曲折の末わたしのところへ来たので公表しようと思う。本人の許可はとってはいないが、まあ、オリの中なのでどうもならんし、本人としてもなるべく多くの人に知ってもらいたいだろう。

 イスラエルの刑務所にいる本人から刑務所の人に手渡す予定です。


要請書

日本国外務大臣川口 様

 はじめまして。

 私は現在イスラエルにおいて身柄を拘束されている日比野真と言います。私は川口 さんに外務大臣として公式にイスラエル政府に対して抗議を行っていただきたいと思 い、お手紙を差し上げました。

 私は6月1日の朝からパレスチナ自治地域であるナブルスの難民キャンプ・バラタ で国際連帯のための活動を行っていました。具体的には難民キャンプは、イスラエル 自衛隊(イスラエル軍)によって軍事的に制圧・占領されており、パレスチナ住民は 道に出ることができず、家の中に閉じ込められています。そのため怪我や病気のパレ スチナ住民は病院に行くことすらできません。また救急車ですら自由に道を通ること ができません。私は志を同じくする他の外国人と共にケガや病気のパレスチナ住民近 くのクリニックに行く時にイスラエル兵に撃たれないように同伴してきました。怪我 人に同伴するというただそれだけの事を活動と呼ばなければいけない状況に私は本当 にぞっとします。

 また、占領下の難民キャンプではイスラエル兵が一戸ずつ家宅捜査を行っています。 しかし家宅捜査といってもパレスチナ住民に銃を突きつけ、家族を一部屋に監禁し、 家財道具を破壊し、家の壁を壊し、14才から45才のすべての男性を強制連行する というようなことがその実体です。私はそういった現場に出向き、もちろん本来は違 法であるこういった行為をしないようにイスラエル兵士に話しかけ、またイスラエル 兵士の行う行為の目撃者となってきました。ひどい話ですが、外国人である私たちの 目撃がある場所では家財を破壊する行為が公然と行われる確率が低くなるのです。

 さらに、私たちは道を歩く時には両手を挙げ、敵意のないことと非暴力の意志を示 し、兵士に対して挨拶をし、対話的に話しかけてきました。兵士一人ひとりに対して も尊厳を尊重し、誠意を持って接してきました。人が攻撃的になり易い軍事的な現場 において兵士を含むすべての人が他者への敬意と理性とを少しでも取り戻せるように とのことことからです。

 こういった活動を行っていた私を含め8人が6月1日の夕方に身柄を拘束されまし た。私は身柄拘束と連行の過程もそれ自体も違法なものであると考えています。しか しここではその事には触れません。

 しかし、イスラエル兵が私たちを拘束し難民キャンプから強制退去させたのは、そ の本当の理由は難民キャンプでイスラエル軍がしている事を私たちに目撃されると困 るからだ、ということに留意して下さい。イスラエル軍は国際社会に知られては困る ようなことをしているからこそ私たちを拘束したのです。

 イスラエルによる難民キャンプの軍事的占領と占領下でのパレスチナ住民に対する 扱いは非人道的な行為であるのはもちろん、他者の尊厳への敬意を欠いたまったく間 違ったものです。しかもそれだけではなく、パレスチナ自治地域への侵略行為や占領 はイスラエル政府自身が同意したオスロ合意にすら反する違法な行為です。こうした パレスチナ住民に対する尊厳を侵す不当で違法なイスラエルの行為こそが状況をさら に悪化させています。

 私は川口外務大臣に対してたった今もイスラエル政府とその軍隊によって行われて いる占領・侵略行為に対して日本政府として公式かつ明確に抗議することを強く求め ます。暴力(それがいかなる理由によるもであっても)によってではなく、対話によっ てパレスチナで起きている問題の解決をはかる可能性を広げるためには国際社会の介 入が不可欠です。私は私個人でできることを試みようとしましたが、それもかないま せんでした。パレスチナ人の尊厳を侵し、オスロ合意にすら公然と反するイスラエル 政府のパレスチナへの侵略と占領を止めさせるために、日本政府として積極的に行動 されることを川口さんに対して重ねてお願い申し上げます。

 私は日本国政府の方針の多くに反対の立場ですが、在テルアビブ日本大使館(領事 館?)の領事のエハラさんには他者としての敬意を持って接していただき、誠実かつ 丁寧に仕事をする姿を見せていただきました。末尾になりますがお礼と共にご報告さ せていただきます。と同時にそういった他者への敬意を持った態度は、たまたま日本 国籍を持っていた私だけが得られるべきではないということ、パレスチナに生まれ育っ たパレスチナ人たちがその生活の中でも得られるべきものであることにすべての人が 思いを馳せ、行動されることを願ってやみません。

西暦2002年6月4日

日比野真

日本国内住所/省略 電話・FAX番号、生年月日、年齢

☆意見・抗議先

●外交政策Q&A:ご意見記入板
   http://www2.mofa.go.jp:8080/mofaj/mail/qa.html
●外務省への意見先メールアドレス
   goiken@m...
● 在日本イスラエル大使館:政治部〔日本の外務省や政治家との折衝〕
   Tel:03-3264-0391  Fax:03-3264-0965  
● 在日本イスラエル大使館:報道・広報室〔時事報道や国に関する一般情報を扱う〕
   Tel:03-3264-0561  Fax:03-3264-0794
   E-mail :information@t...
●在イスラエル日本大使館
   所在地:Asia House, 4 Weizman St., Tel-Aviv 64239, Israel
   電 話:972-3-6957292
   FAX:972-3-6910516
●Ariel police station +972(0)3-9065444
(すでに日比野はアリエルの警察署から刑務所へ移送されています)
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2002/6/8