現在日本の軍事費はつまり防衛予算は四兆八千億円だそうである。軍事費番付は2002年版の、(英国国際戦略研究所資料) では、
1位 | アメリカ | 2946億ドル |
---|---|---|
2位 | ロシア | 588億ドル |
3位 | 日本 | 444億ドル |
4位 | 中国 | 411億ドル |
5位 | フランス | 342億ドル |
だそうである。(註1)もちろん額だけでは戦力は比較できず、日本は三位であってもこれはあらかた人件費で、四位の中国に兵力、武器とも及ばないというはなしはある。けれども軍隊の問題点にはその軍事的圧力でもって他国に脅威を与え友好を阻害するという点のほかにカネ食い虫であるという点がある。
耳学問では、2004年にはアメリカ合衆国の軍事費は世界全体のついに半分に達したそうである。おかげでアメリカ合衆国では学校予算がけずられて、トイレのペーパーにもことかくとか、図書館に本も入荷できないとか、不満がでているそうである。
この点では非武装中立を国是として常設の軍隊をもたないコスタリカが国家予算の四分の一を教育費に投入してなかでも給食費を最優先していることとは対照的である。 この手の非武装中立か武装かというはなしがでると、たいがい非武装なんかで実際に攻めこまれたらどうするのか、というはなしになり、それじゃあ、非暴力で抵抗するか、とかいうはなしになったりするのだが、ガンディーあたりの非暴力思想というのはそういうことではないらしい。
インドはイギリスに支配されていることが問題なのではない。ただ、イギリスを追い払って、日露戦争後の日本のように富強の独立国を作り、強い軍隊を持つのが良いというのなら、それはイギリス人のいない、イギリスをつくるだけではないか。
問題はそこにはない。真の問題は近代文明にあるのだ。近代文明とは何か。それは肉体的欲望の増進を文明の表徴とみる思想に基づいている。西洋近代の基本問題は、肉体的欲望を解放したことにある。無制限の生産をたたえ、無制限の消費を歓迎した。
できるだけ手足を使わずに遠くまで行くこと、できるだけ多くの種類の食べ物を食べること、できるだけ多くの種類の衣服を着ること。このように肉体的な欲望をできるだけ満足させることを進歩だと考える思想では真の独立はありえない。われわれが打ちたてるべきインドの自治とは真の文明なのであり、真の文明とは徳のありかという意味である。真の文明は、肉体的欲望の自制に基づくものでなければならない。生産だけではなく、むしろ消費に注目するとき、その暴力性を批判できる。人間は知っている技術を必ずしもすべて使うべきでない。そのことをインド古来の文明は教えている。
ガンディー 『ヒンドゥースワラジ』1909年
というわけで、非暴力というのは消費そのものを抑制して、もっている技術をあえて使わないこと。無意味に増産したり、成長したり、生産しないことであるらしい。なんだかエコロジー系のはなしのようではあるけれども、1909年の時点で技術文明が直面する成長の限界にはもう気づいていたわけである。しかしながら、ガンディーという人ひとりがそういう奇矯な人だったということではなくて、当時の南アフリカなり、インドでこのメッセージがどっちかというと、低い生産力で食うにもこと欠きがちな人々の心に訴えかけるものをもっていたこと。そしてこれを実践する人々がイギリス本国に圧力として機能したということには感心するところである。自分のくらしに対して、もうこれで十分と考え、自分の子供、子孫もそれで十分といえることには何だか感心してしまった。将来が不安でなければ、無闇に欲望を広げる必要もないのか、という気もするのであった。
ところで、その後のインドはガンディーの構想したようにはならず、独立運動をともにした相手と核兵器で対峙するようになってはいるのだが。
その後の軍事費の経過であるけれども、2005年度の予算は Global Issues That Affect Everyoneによれば以下のようであるそうだ。
1位 | アメリカ | 4207億ドル |
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2位 | 中国 | 510億ドル |
3位 | ロシア | 508億ドル |
4位 | 日本 | 414億ドル |
5位 | イギリス | 413億ドル |
その後日本は6.7%減額で、いっぽう中国は24%の増額で二位になっている。劇的に増額しているのがアメリカ合衆国で43%増である。またアメリカの友邦イギリスは22%の増加でフランスを抜いて五位となっている。
2004/12/31